今回の目的地、スリランカへ向かう途中のトランジットは香港。6時間あるので、無理やり入国してみた。
雨上がりなのか、幻想的な雰囲気が漂う。空港からの風景も、想像していたような、それともまた違うような空気感に飲み込まれる。
文字で説明するなら、なんという事もない風景でもある。
このタイミング、もちろんデモの現場を目指した。金鐘の駅を降りると、そこはいきなり現場であった。心の準備ができておらず、戸惑う。とにかく外へ出るしかない。出口はもう、ビラ、ビラ、ビラの応酬だ。まだ香港入国1時間の事である。
明るい外へ出ると、もはやそこは言葉を失う世界だった。
静かなのである。交通が止まり。人の流れが止まり。せき止められた思いが渦巻いている。
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この時は知らなかったのだが、実は数時間前に警官隊と学生との衝突で多数の逮捕者を出した、その夜が明けたタイミングでもあったのだ。
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寝静まっていたという表現が正しいのかもしれない。
ひと通りという表現が正しいのかわからないけれど、見れるところを全て見て回ることにした。
同じような人々が多数いるようだ。カメラを持つ人の数が目立つ。
普段を知る人々からすれば、異様であろうこの景色が、自分にとっては初めての香港なのである。
無数のメッセージを貼り付けた壁。
香港行政長官の棺桶。
この景色なのである。
マクドナルドは、それでも営業していた。
警察は遠巻きに、想像以上の少なさで見かけただけだった。まるで見守っているかのようだ。
僕たちは、本当のデモに出くわしたことはない。そのような理不尽さに出会ったことがない、という事でもある。その理不尽さに憤ったりしながらも報道を見て客観的な判断をした気になっていたりする。しかし、この景色を作り上げられたら、誰にとっても無視できるものでは無いのが、体から納得させられる。多くの目撃者やジャーナリストばかりが目立つとしても、それぞれにこの景色を否定できる力は残さない程に突きつけてくる説得力が、デモにはあるのだ、と。
香港の人々は、どう思っているのだろうか。